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シフト ★ L9-0B   

2008年 05月 11日

 5-0で迎えた7回表の攻撃。無死1,2塁、打席には強打者ブラゼルという状況。
 帆足の出来を考えれば、既にオリックスからすると崖っぷち。それでも一縷の望みを繋ぎ止めるなら、もうこれ以上の失点は絶対に許されない場面。
 そんな剣が峰の場面でオリックス守備陣が選択したのは、"ブラゼルシフト"。セカンドが大きく一塁キャンバスに寄り、中堅から左翼方向を疎にする代わりに一、二塁間を狭める、いわば左のプルヒッターに対する典型的な守備陣形である。
 果たしてブラゼルは、金子の外寄り直球を強引に引っ張った。しかし、引っかけたようなその打球は思いのほかセンター寄り、皮肉にも、本来のセカンドの定位置付近へ転がって行ってしまう。慌てて左に寄った、後藤光のグラブも僅かに及ばない。さして球足の速くない打球は、定位置ならほぼ確実に4-6-3となるであろうラインをあざ笑うように外野まで転がり抜け、ライオンズにはダメ押しの6点目が入った。更に下位打線の連打が続き、終わってみればこの回4点で9-0。
 最後の望みどころか、試合はこれで完全に壊れた。

 シフトが成功していれば、流れを変え得たかもしれない。だが逆に裏をつかれた場合――特に今回のように、定位置ならば併殺だった打球がタイムリーヒットになった時など、投手の気落ちは計り知れないものがある。確たる弱点を抱え、ある程度打ち取れる形のあるブラゼルに対し、走者が二人居る場面でオリックスベンチはあそこまで極端なシフトを敷く必要があっただろうか。定位置で打たれたタイムリーとシフトが裏目に出たタイムリーとでは、投手のダメージを等価に計ることは出来ない。事実あのタイムリーヒットで、川越の集中力が途切れたのは明らかだった。
 
 昨年西武ライオンズは伊東政権下の元、シフト守備を多用した。その詳密な成功率は調べるべくもないが、我々ファンの記憶の中ではそれが成功したシーンよりも、裏目に出てしまったケースばかりが強く印象に残っている。
 単純な前進守備にしても同じこと。シフト守備は1点を殺す確率を高めると同時に、2点を失う確率をも高めているのだということを、忘れてはいけない。
 打球の行方がたまたまセカンド正面方向だった、という見方をすれば、この話とて結果論の域を出ない。だが、それでもやはり個人的には、よっぽど確信に近いデータがない限り、極端なシフトは功罪の"罪"の方が大きいのではないかと考えてしまう。鋭敏な勝負勘と精密なデータ、その中でこそ、シフト守備は意味を持ってくるのではないか。安易安直な多用は、投手にとって、時に大きな負荷と落胆をもたらす可能性のあるものである。




 一方、死球退場の中村選手。左頬骨骨折という、残念な診断結果が球団から発表された。
 退場となってしまった金子投手、今日のみならずここ最近の登板で不調が続いており、焦りや混乱もあったマウンドだったろう。今回のような抜け球の危険球は、往々にして、こんな時の冷静ならざる投手に起こりがちなもの。点差が開いていた状況での死球にはつい不満も募りがちだが、そこはそれ、頭にわざとぶつける投手は居ないと信じるしかない。
 骨折の具合次第では早期復帰も可能だが、今のチーム状況と渡辺監督の性格からするに、無理をさせないのではないかと私は思う。頬骨の骨折を抱えながらプレーした例は意外と枚挙に暇がないが、やはり聞くだに痛々しいことに変わりはない。
 好事魔多しか、ここに来てリーグ全体に蔓延する故障禍が、西武にもその触手を伸ばし始めた。
 そんなときの強いチームの条件は、代わる代わるのヒーローが誕生すること。
 中村選手には今一時療養して貰いつつ、黒瀬選手や後藤選手など、二軍で好調の若手台頭に刮目したい。

by taoyao | 2008-05-11 21:00 | ライオンズ(野球)

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